音楽の贈り物は、生涯に続く贈り物です。音楽は、感情と感覚の言語。すべての子供が、その喜びと規律を、心と身体の総体で経験するべきです。ダルクローズ・リトミックは、子供が発見することで学ぶ独特の音楽学習法です。それは教育的で、励ましに満ち、良く釣り合いが取れていると同時に相互作用的で社会性があり、楽しいものです。学ぶことへの愛、音楽への愛、そして自信と創造の感覚へと導きます。
　アトリエ・ドゥ・ダルクローズの教師達はダルクローズ教育法において経験と習熟を積んでおり、子供達への愛が、彼女達の子供との仕事の美しさに表れています。音楽と動きへの彼女達の情熱が子供達の想像力を捕らえています。日本に招かれた折、私は仕事中のこれらの素晴らしい教師達を見、子供達の反応をじかに見てきました。それは、いまに忘れ難いものです！　（１９９８年）

　古代ギリシャの時代から、教育の果たす役割には大きいものがありました。教育の祖といわれているソクラテスは、「教育とは抽き出すことである」と、その核心ともいうべきことを述べています。
　人間の持つ潜在的な、いろいろな能力を抽き出してくれる、そういう教室の出現は、同時に、人間教育の何たるかも示してくれるものと想われます。調和のとれた人格形成は、知的教育へ偏重することなく、また感覚教育に偏ることなく、両者を適切に融合させる方法手段によって、達成されるものと思います。
　つくばという学園都市に、理想的な教育を求める教室アトリエ・ドゥ・ダルクローズが開かれていることに私は大きな期待を寄せています。　（１９８６年）

　アトリエ・ドゥ・ダルクローズの中に、バレエ教室を作りたいとのお話がございまして、喜んでお引き受けさせて頂きました。私共団員から教師がお伺いしております。リトミックとバレエを共に勉強していくことは、私としても永年願っている事でしたが、なかなか実現できずにおりました。 アトリエ・ドゥ・ダルクローズにおいて実現されます事は喜びでございます。
　私自身子供の頃、リトミックを少しばかり勉強いたしましたが、これはバレエをやって行く上に大きな助けになるものと、痛切に感じているものでございます。バレエは総合芸術であり、舞踏劇です。踊りにおいて、あらゆる表現をしなくてはなりません。時間をかけ努力と忍耐をし続けながら、テクニックをまるで言葉を覚えるように勉強して行かなければなりません。
　でも其の努力は、音楽にのり、テクニックを一つずつマスターし、何時か踊る喜びを得られるようになって行く事で、何にも替え難いものになって報われるでしょう。 （１９９８年）